映画の舞台が狭くなった/凍傷覚悟の昭和と、エアコン完備の令和
久々に世間で話題のロングラン映画を観てきた。
感想は――「うん、面白い」。でも、世間で大騒ぎするほどではない。
その前にテレビでたまたま再放送していた「南極物語」を観た。数十年ぶり。
いやぁ、昭和の映画づくりって、やっぱり“本気”だった。
あれ、実際に南極で犬と一緒に撮ってるのよね?
今ならCGで済ませるような地獄ロケを、実際に吹雪の中でやってたんだから。
ついでに「植村直己物語」「復活の日」も観直してみたけど、あの頃の映画ってスケールがとにかくデカい。
俳優の演技力うんぬんより、「ここまでやるか!」っていう情熱と体力で押し切ってた。
まさに“命がけの娯楽”。
それに比べると、令和の映画はなんだか“省エネ設計”。
ワンルームのようなセットで、心の機微を繊細に描いてはいるけど……
昭和の火山級エネルギーを知ってる人間には、どうしても「ぬるいお風呂」に感じてしまう。
もちろん、今回の映画でも「役者魂!」は確かに感じた。
でもそれは、雪山で凍傷寸前になりながら犬に「がんばれ!」と叫んでた昭和の魂とは、まるで違うベクトルの熱さ。
令和の映画に“吹雪”は吹かない。
ぬるめの感動に包まれて、エンドロールを見ながら、少しだけあの南極の冷気が恋しくなった。