スマホで泣いて、テレビを笑う。昭和オバちゃんの複雑視聴 ― BGMが小田和正の時点で勝負あり。涙は通信方式を選ばない ―
テレビをつければ、オリンピック選手の家族と苦労物語。
涙腺の準備が整った頃、今度は「さなえチルドレン」。
そして必ず流れる、
小泉チルドレン代表・杉村氏の若き日のはしゃぎ映像。
もうこれは様式美だ。
季節の風物詩。
素人の私ですら
「はいはい、出ました」
と口に出るのだから、お茶の間も同じだろう。
視聴率会議のホワイトボードに書かれたのはきっと
・オリンピック
・チルドレン比較
・過去映像
・コメント
はい、番組完成。
テレビが斜陽と言われる理由って、
革新がないからじゃない。
安心して予測できるからだ。
次に何が来るか分かる。
驚きがない。
それでもテレビはまだ、
“国民共通の思い出製造機”をやめられないらしい。
一方、私はスマホを開く。
YouTubeショート。
そこに流れてきたのは、
病気の家族と寄り添う短い物語。
BGMは小田和正。
…強い。
反則レベル。
昭和の必勝パターン
「動物・子供・病気・名曲」
フルコンボである。
コメント欄は
「泣ける」
「涙止まらない」
の大合唱。
私も、泣いた。
でも同時に、もう一人の自分が腕を組んでいる。
「いやいや、そのBGMはズルいだろ」
感情は揺れるのに、分析脳は冷静。
もしかすると
単純なのは視聴者ではなく、人間の涙スイッチなのかもしれない。
時代が変わっても、
装置がテレビからスマホに変わっても、
人は
家族
苦労
再会
名曲
この並びに弱い。
だから結局、
テレビが古いのでも、ショート動画が新しいのでもなく、
泣かされる構造は昭和から変わっていない。
そう思うと、少し可笑しい。
進化したのは通信速度だけで、感情の回線はずっとアナログのまま。
今日もまた、
泣きながら、どこかでツッコミを入れている。
昭和のオバちゃんとは、
涙と冷笑を同時再生できる
ちょっと面倒な視聴者なのだ。